Chanty フルアルバム座談会 文:糸永緒菓子
2月28日リリースの『Chantyの世界へようこそ2』について、メンバー座談会を実施。
何か作らないと不安だから何か残そうと思って(笑)。
――最新曲を詰めたというよりは耳なじみのある楽曲が多い気がしますね。
千歳:さっき〝新曲が暗いですね″って言われたんだよね(笑)。
芥:暗いかな?
千歳:そう!俺も暗いんだ、と思って。俺は暗いって感覚ないけど、聴いた人が暗いって印象だからうちらの感覚がもうそうなってるんだね(笑)。
野中:まあ暗いか明るいかって言われたら明るくはないかな。ポップソングではない!
――収録曲はどうやって決めたんですか?
芥:いくつかストックがあって。
千歳:「謳う心臓」なんて原曲は活動が止まった時に作った曲。アルバム出すとか、先のことがまだ何も分からない時にとりあえず何か作らないと不安だから何か残そうと思って(笑)。
芥:それこそ「yureru」なんて4人になって初めてスタジオに入った時にできた曲だね。
野中:自分たちの曲を演奏しても全然しっくりこないから、今ある曲を演奏する気にもなれない。そんな時にとりあえず何か残そうと思って。成人くん何か叩いて、から始まってコード進行こんな感じにしようか、って何回か合わせてできたのが「yureru」。
千歳:曲が出来上がった時ちょっとホッとしたもん。
――WEST(17/9/16)ではインストゥルメンタル曲として演奏されてたので歌詞が入ってきてびっくりしました。歌詞は何をイメージして?
芥:冒頭の〝緞帳が下りていく″っていうのは活動止まっちゃったときのこと考えて。だから俺の中では活動再開したO-WESTの日のイメージ。
千歳:やっぱりそうなんだ。俺もそう、“緞帳”って言葉聴くとWESTのあの日がすごい瞼に浮かぶ。
芥:あの時に感じたものを書こうかなと思って。だから9月16日の周年ライヴの後にちゃんと書いた。あの時に見たものをパッケージした言葉として「揺れる」と「震える」、「揺らぐ」っていうのはずっと言ってたんだけど使いたくて。だから、歌詞なんだけど、そこまで歌詞っていうことを意識してない。インストゥルメンタルだと思って聴いてくれたらって思います。
こんなにも求められたいのかっていう風に思った
千歳:「謳う心臓」はさ、もう1人ギター入れて5人でやる予定だったじゃん。だから俺はツインギターのつもりで作ってて。ちゃんと決まってもいないし誰が入るなんて何も分かってないけど、Chanty を5人でやるつもりで大枠を作った曲だから、これやろうってなったときに、俺は躊躇したの。
成人:そうなんだ。
千歳:みんなが「やりたい!かっこいいじゃん!」って言ってくれて嬉しかったんだけど、俺は5人の画であれを作ってたから。
芥:ちょっと変な顔してたもんね。これがいいって言ってた時(笑)。
成人:これを4人でやろうと思ったのは何が決め手だったの?
千歳:決め手?それはみんながやろうって言ったからだよ(笑)。だから最初は乗り気じゃなかったけど、結果として4人の形で出来たからよかった。この曲が1番不安だったな。
成人:「謳う心臓」が1番原曲から構成が変わったよね。
千歳:そうだね。スタジオで1番いじったの今でも覚えてるもん。まだ何も決まってなくて、この先どうなるか分からないっていうそんな中で、でも何か残さなきゃって絞り出した感じだった。それがChantyなのかなんなのかすら分からない。でもそれがちゃんとChantyになったから本当に良かった。
芥:この曲は「yureru」とセットで考えてたじゃないですか。次にこれきたらかっこいいなって思って。
千歳:スタジオでさ、みんなで繋げてやってみて「おぉー!!!」って言ったもんね。拓ちゃんが「俺、絶対買うわこのCD!」って言ってた(笑)。
野中:もしCDショップで視聴機にこれ入ってて、1曲目2曲目これ来たら聴くのやめて買うもん。ここで聴くのもったい!って感じると思う。
芥:しかしながら相変わらず絶妙な乗りづらさが気持ちいいですね!
野中:新曲は暗いって言うか、張りつめた緊張感があるのかもね。
芥:「yureru」は俺の中でも広がる感じなんだけどね。
千歳:でも広がってから急にギュッとされる感じだね(笑)。
芥:そう。スタートしてさあ走り出したはいいけど、もう一回Chantyの見つめ直してみて。Chantyって、独自の路線を貫いてるっていう意識はないんだけど、やりたいことやって周りからどう見られてもいいですとか言っておきながら、4人全員愛されたくて仕方ない人たちじゃねえかなっていうのを歌詞にしようと思って。あくまで裏テーマですけど。結局そういう狭いところでもがいてるだけな部分もあるなって自分たちの嫌な部分をこの歌詞で先に消化しておこうと思って。アルバム開始してすぐに認めます!僕たちは愛されたいです!って。
野中:でもさ、それって普通のことやと思う。嫌われたい人間なんておらんし。
芥:そう。だからなんかちょっとカッコつけてた部分があるなと思って。
野中:強がって、“別に嫌われても気にしないよ”みたいなこと言っちゃってたところがある。そういう風に見られようとしてたところはあるよね。でも正直に言います。好かれたいです(笑)
――割とバンドのことを書いた感じですね。
芥:書き始めはそういうつもりじゃなかったんですけどね。活動が止まって、こんなにも求められたいのかっていう風に思ったなって。今後そういうのを迷わないように、ちゃんと残しておきたいっていう気持ちの表れみたいなところが俺の中にはあります。
――「ミツケタ」
千歳:「ミツケタ」も絞り出したね。
成人:じゃあ制作したのは5月とか?
千歳:違うかな。これはアルバム出そうぜってなってから、どうしようどうしようって絞り出した曲。でも俺はこの曲が1番好きなの。このアルバムを作るにあたって、仮歌っていうのを始めて。それがだんだん楽しくなってきちゃったんだよね(笑)。
野中:甘い声の仮歌入ってたね(笑)。
千歳:そうだった(笑)?楽しくなってきた時に絞り出して作った曲なんだよ。サビの歌メロをこれだけは使って!ってお願いしたの。サビはどうしようかとか話してる時に、変えられそうになって。だからこのサビの歌い出しのこれだけは残してください、って(笑)。で、なんとか残してもらえたからすごいその部分は聞いてほしい。今までは聴かせたいポイントどこなの?って曲出した時よく聞かれてて。「いや・・・サビですけど・・・」って思ってたけど、自分で仮歌を入れてみて、聴かせどころってこういうことなんだなっていうのが分かった気がする。
成人:今回、歌入れすることによって千歳さんがどういう曲のつもりで作ったのかっていうのがやっと明確になったかな。今までは、曲がかっこいい!じゃあこれをやろう!って感じだったけど、今回はメロディが最初から入ってるからこそじゃあこんな風にして曲を成り立たせた方がいいんだなっていうのが分かったから、歌入れはぜひこれからも続けて欲しいなと思う。
千歳:それがないと分かんないもんね(笑)。だから今まですごかった。いきなり曲投げてかっこいいね!っていうところから作り始めて。それもうちの持ち味だけどね。
成人:芥さんのメロディ入れてやっと、“あ、Chanty”だなって感じだったもんね。
千歳:だから今まで頼ってた部分が大きかったなと思った。だからね、明確にベースはこうしよう、こういうのがいい!ドラムはこうしてとか言えるようになって。今までは概要だったからじゃあみんなに任せるね!って感じだったの。でもそれが明確に見えるようになりました。
――ただのストーカーの話です(笑)
芥:歌詞はね、「冤罪ブルース」って曲があったんですけど、その主人公のその後のお話。ただのストーカーの話です(笑)。だから全然意味はない。「冤罪ブルース」では、手出したくても出せないみたいな、届きたくても届かない感じを楽しんでたのがちょっとエスカレートしちゃったっていうだけの話なので。そんなに歌詞に意味はないですよ(笑)。
千歳:その話を知らないと、普通に恋愛っぽく聞こえるよね。
芥:最後の“やっとやっと キミを見つけた”って言うのは路地裏に追い詰めた感じ。
――知らずに聴いたらChantyには珍しい切ないテーマだなと思ったけどそれ聴くとらしいというか。
芥:そう、だからこの曲めっちゃくだらないです(笑)。
野中:でも追いかけてるその人からしたらものすごく愛の深いラヴソングだよね。
芥:そうだね。追いかけたくて仕方ないっていう気持ちから、やっと会えた、だからこの場所にずっといたいと思う。最近ね、俺もそういうこと思ったりするんですよ。
成人:というと?
芥:「冤罪ブルース」にはモデルになった人がいて、最近よく電車が一緒になるんですよ。大体いつも同じ時間で、見かけると色々考えちゃう。
野中:車両もいつも同じとこ乗るし、そうすると行動も似てくるよね。分かる分かる。
芥:そう。なんか向こうも見てる気がして。実際、「冤罪ブルース」も満員気味の電車でかばって、お互いを「あっ」って意識しちゃったことがきっかけで書いたわけから。気付いたら目で追っちゃいますよね。だから俺が実際追いかけるようになっちゃったらすいませんって感じ(笑)。追っちゃうのは自分でも分かってるから、そんな気持ちを加筆しながら書いたのが「ミツケタ」。名前も知らないんですけど、結構いい子なんです。
成人:何を基準に(笑)。話したことはないんだよね?
芥:ないです。でも数秒だけありますよ!「あっ、すいません・・・」みたいな。向こうもいつもいる人だなって分かってるんだと思うの。すごい優しい子なんですよ、お年寄りがエレベーター乗ろうとしてる時にすごい笑顔で「どうぞ」って待っててあげてて。
千歳:これ思ったより見てるな(笑)。
芥:でも実際追いはしませんよ(笑)。そんな気持ちになってみたいなっていうこと。もしかしたらその子も待っててくれるかもしれないし、っていう妄想の先の話です。昔にちょっと好きだった人に似てるんですよ、ここまで追ってしまうのもきっとそのせいなんだけど(笑)。
――これは自分たちのアクみたいな感じ
芥:「比較対象」は俺が原曲出したんだけど、これは自分たちのアクみたいな感じかな。これも過酷だよね。
野中:「比較対象」に関しては不安の方がデカかったな。曲はかっこいいけど、それよりも先に周年ライヴっていうのもがあって、その緊張とか張りつめたものとかそういうものの方が大きかった(笑)。つらいとかじゃないけど、不安だった。そういう思い出の曲やな。4人で制作した初めての音源の曲だしね。
千歳:思い出にできてるってことは消化できてるってことなんだろうね。
芥:なんかシリアスなんだよね。だからこれはこれで、聴くとシャキッとする。これまでのひと悶着を自分の中で消化した感があって。だから「比較対象」と「おまじない」を書いて、自分たちの良くないアクみたいなものと、感謝の気持ちはそこでパッケージしておしまいっていう。大事な感じがします。
野中:「ミツケタ」と繋がってるよね。
芥&千歳:と、言いますと(笑)?
野中:「ミツケタ」で最後に“見つけた”とか言ってるけどさ、「比較対象」では“私はここにいるよって”って叫ぶじゃないですか。
芥:あ、良いこと言ってくれました!「比較対象」に繋がってるっていうのは自分もちょっと気付いてなかったんですけど、「ミツケタ」は、「謳う心臓」の“見つけられますように”から続いて最後“見つけた”で終わってて。だからストーカーの曲ではあるんですけど、自分を見つけたうちの1つのケースっていうつもりで2曲並べたんですよ。で、そこからまた、「比較対象」に繋がって。だから序盤の嘆きっぷりが半端ない(笑)。
――そのせいですかね、“暗い”印象になるのは。
芥:いや、だから勝負は後半!俺らはここから巻き返してくからね。だから最初の方はこのアルバム聴くの重いと思う。
野中:でも聴く人にもそれぞれ色んな考えがあるってことやもんね。
芥:例えば歌詞なんてね、自分で歌ってるうちにどんどん解釈変わってくもん。日々進化する。
野中:聴き手もそうやしね。それを聴いた時の気分で変わると思うし。それが曲じゃない。
芥&千歳:良いこと言った!!
――再録された曲が何曲か収録されてますね。
芥:「天翔る」は再録したかったんですよ。前回のフルアルバムでは「とある星空の下」をリメイクしたんですよ。で、「天翔る」は次にアルバム出すときは再録しようと思ってた。この曲はここで1回色んなものを消化してまたやったら面白いかもなって最初から思ってて。ライヴで演奏するときはアレンジしたりもしてたから、これを今パッケージにしたら面白いんじゃないかなと思って、改めてやった感じです。
野中:「m.o.b」は前回の音源が少し納得言っていない部分があるから録り直したしね。プレー面もそうだし、音的な面もトータル的なところでこの曲は録り直したかった。
芥:やっぱ難しいね、この曲は(笑)。録り直してはみても完全な理想になったかって言ったらそうじゃないなって思っちゃった。
野中:正直ライヴで何回もやってるからチョロイかなと思ったけど全然ダメやったね(笑)本当難しかった。
千歳:汗かいてからやったら良かったね。ライヴで曲をやっていく中で、だんだん息がそろってきてハマる曲でもあるじゃん。だからレコーディングでさあ録りますよってなるとそのゾーンに行けないっていうか。
芥:本当に難しい。死ぬかと思った。
芥:「万華鏡」は実はすごい昔からあったんですよ。「天翔る」作るって時に、「天翔る」かこの曲かってなったくらい。「天翔る」って知人が亡くなった時のことを曲にしたんですね。その「天翔る」の歌詞を書いたときって対をなしてこの曲ができてて。サビの“伝えてくれなきゃ分からない”っていうのは、残された人の想いというか。言ってしまえばその人は自ら命を絶ってしまったから、残された人はその人が何がつらかったのかもいまいちよく分からないままで。どう思ってるのか伝えてくれなきゃ分からないよなあっていうところから、「伝えてくれなきゃ分からない」っていうタイトルだけでずっと残ってた。それが、たまたま今回再録で「天翔る」を入れることになって、意味合い的にも繋がってくるなってことで収録されることになりました。
成人:これは歌詞書くの早かったの?
芥:超長かった(笑)。“伝えてくれなきゃ分からない”ってところから何を広げたらいいんだろうと思って。歌詞はアルバムに入れるって決めてから書いたんだけど、“伝えてくれなきゃ分からない どこが痛いか言って”まで歌詞ができてた。だから、「どこが痛いか教えて欲しい、分からないから」っていうところから広げていくのが大変だったかな。ただ、その人は歌うのが好きで。「天翔る」にあるような“とてちてた”みたいなことすごい歌ってたの。思い返せば、その人のキラキラした素敵だったところが浮かぶんですよね。あの頃はキラキラしてた、それに気が付けなかった自分を許してください。っていうのを伝えたくなっちゃって。
夜中冷蔵庫を開く曲です。
野中:「魔が差した」に出てくる“酒がまずい”って良い言葉やんな。このバンド一人も酒飲みいないのに(笑)。
芥:それ書きたかったんですよ。これね、夜中冷蔵庫を開く曲です。
成人:それ聞いてすごく納得した(笑)。
芥:我慢できませんって。この歌詞書いてるとき、精神的にいろんなことが本当つらくて。ストレスのせいか、盛大に夜食を食べてたんですよ。それを書こうと思って。“感情のない冷えた酒がまずい”ってことない?家でさ、寝酒みたいにビール飲んでみようって吞んだはいいけどなんかまずい時ない?
成人:ある。分かる。そういわれたらすげえ分かる。一口つけてなんか違うなあってなるの。
芥:そう。まずくて体調まで悪くなってきちゃう。っていうこれはただのポップソングだよね(笑)。
――“開けてはいけない扉”って冷蔵庫の扉だったんだ。
芥:そうそう。狼が人を襲うように、食料を求めて冷蔵庫を漁る。で、夜明けになって、 “あーあ”って嘆くの。ラーメンとか炭水化物摂っちゃったりして、お酒まで飲んじゃって顔パンパンで最悪だなって思う。夜明けの嘆き。だからすごい可愛いポップソングなんですよ。
――そういえばプレーとか楽器のこと聞いてないですね。
野中:俺は特に言わなくていいです。これと言って今回のアルバムは聞いて欲しいところ正直ない。それはマイナスな意味じゃなくて、ベースをフィーチャーして聴いてほしいわけじゃなくて、曲全体を聴いてほしいから。ここがベースの聴きどころですよ、っていうのは本当にない。
千歳:確かにおさえ気味だよね。
野中:昔からそんなに主張強くないんですよね。性格なのかも。主張したいんやったらライブですればいい。音源で主張するって、バンドって4人で1つのものやから自分のエゴを出してもよくないと思うかな。像が崩れてしまうよね。
芥:なんかその言葉感動しちゃった(笑)。成人くんは?
成人:昔からインタビューとかでドラムの聴きどころとか聞かれると俺も結構困る。そこは拓ちゃんに近くて、あくまで歌が1番に聞こえて欲しいから、ドラムのどこ聴いてほしい?って質問されても困るかな。
芥:と、怒ってらっしゃいます(笑)。
――「貴方だけを壊して飾ってみたい」は会場と通販限定で販売されてた楽曲ですね。
芥:発売したときは事情があって撮れなかったMVを録りたかったんです。絶対この曲は面白いのが出来そうだから撮った方がいいよって話して。せっかくだし曲も改めて録ろうってことになりました。
野中:この曲ってさ、全楽曲の中でも、Chantyの核となる部分になってるんじゃないかな。活動初期は「終わりの始まり」とかそういう感じの曲がそうかなと思ってたけど、この曲が出来てからはこれこそこのバンドの核だわってすごく思える曲なんだよね。
芥さんって感じがすごいする
芥:「君とこの部屋」は俺がモバイルファンサイトの自分のコーナーでちょっとつま弾いた曲をそのまま曲にしたんですよ。
成人:この曲かなり早い段階でアルバムに入れるって言ってたよね。
野中:なんかこの曲さ、芥さんって感じがすごいするんだよね。メロディの在り方とか曲のコード進行もそうやし、なんか不思議な感じ。進行が変なのかな?
千歳:変だよ(笑)。芥くんと一緒にやってて変だなと思うもん。
芥:そうなの?なんかちょっと不満そうじゃん(笑)。
千歳:いやいや、勉強になってるからいいんだけど(笑)。ちょっと変な進行なんだけど、歌的にはハマってるからこれでいいんだろうなっていうのがよくある。
――みんな変だなって思いながらやってたんですね。
千歳:楽器的なことで言うとね。「比較対象」もそうなんだけど、ギターっていう観点からするとすごい変なことをやってる、けどそれが狙ってるんじゃなくて感覚なの。だからもう大変(笑)。「ここじゃなくて・・・さっき弾いた音!」とか言葉で説明するから。でも芥くんの頭の中では鳴ってるんだろうなって、2,3回やるといつも使うこのコードはこれなんだろうなって分かってくるんだけど。
野中:拍子が変わるやん。デモで聴いたとき訳が分からんくて。デモがフワッと弾いてたのも相まって、最初はこの曲無理かもしれないと思った(笑)。ここまでパキッとした拍子チェンジもChantyでは初めてやと思うし、今までありそうでなかった曲なんかなって感じかな。
芥:ふわふわしてる曲だからね。拍子もふわふわしてるんです。
野中:そのふわふわ加減が芥さんなのかもしれないね。
千歳:そうだね。「そこで変わるんだ・・・」みたいな。打ち込むときすごい嫌だなあって思ったの。
芥:本当に(笑)?申し訳ない。
千歳:楽器の3人は思ってたはず(笑)。でも曲をよくする為だから仕方ないって思いながらも、一回苦虫を噛み締めるんだよね。俺はその時に「ああ、ボーカリストなんだなあ」って思うの。それはもちろんいい意味で。すごく自由なんだよね。うちらは作ろうと思ったらデスクで作ってしまうから、デスクの中で収めようとしちゃうからさ。
芥:あと、この歌詞超自信作なんですよ。この曲で夜のChantyが終わると思ってて。今まで夜が云々って散々嘆いてきて、このアルバムで言うと「魔が差した」、他にも「今夜未明」とかで夜を歌ってきて。その中でもこれはやっと人の為に書けた。今まで自分が「あ゛ぁ~」って嘆く曲ばっかりだったものに対して、活動止まった期間とか色んな事を考えた時にその夜を自分だけじゃなくて、共有する人がやっとできたみたいな。一緒に座ってればそれでいいやって共有する人ができたと思ってるんですよ。だからChantyの今までの夜を歌った楽曲の中で散々一人で嘆いてきた人はここでやっと一つ終幕を迎えてる。
千歳:何年越しかな。結構苦しかったんだね(笑)。
野中:一歩進んだ感じね。
芥:そう。一歩進んだ感じがして。これからも夜を題材にしたような歌詞は書くと思うけど、これで自分も一歩進めた気がする。
野中:バンドとリンクしてるよね。4人でやるって決まって、一歩進めたんやって。そういう意図があったわけじゃなくても、いい意味でそう思えるかな。
芥:そう。後半巻き返し図ってきたから(笑)。
千歳:やっと(笑)。って言ってもあと1曲しかないけど。
野中:まあでもその1曲のタイトルが「最低」やからね(笑)。
芥:いいじゃん(笑)。この人(千歳)、多分バンドやめようとしてたんです。製作が過酷だったり、自分に対して思い悩んでたように見えて。それがあまりにしんどそうだったから、「千歳くん、今やれることとやりたいことを全部詰めた曲をなんでもいいから自由に作ってきて!」って言ったら自分で甘い声で歌った仮歌入れてこの曲を持ってきたの(笑)。
野中:あれはインストアがあった日かな。
芥:そうそう。その帰りにスタジオで合わせてみたらいいじゃんって。うちらに光を見せてくれた曲なんだよね。千歳くんに「これいいじゃん!MVとか撮れそう!」って。そしたらすげ言ったらすごい照れてて(笑)。
野中:照れすぎて「俺は違う曲の方がいいと思うけど・・・」って言ってたしね(笑)。
このアルバム好きであって嫌い。
――最後に「最低」があってよかった、そう思える曲ですね。
芥:でしょ?聴いた瞬間この曲ラストだなって思って。これで最初から聴いていくと辻褄が合う。これがなかったらすごくつらいアルバムだと思う。1曲1曲がどうかじゃなくて、全部最初から紐づいちゃってるから。自分で聴いてて思うけど、最後に「君とこの部屋」と「最低」に繋がってなかったらつらい。だからこのアルバムは好きであって嫌い。だって、一曲ずつを主役にすることができなかったから。これは歌詞の話になっちゃうけど、前のバンドのときに「手招く太陽」って心中するみたいな曲があって。俺はその時とちょっと繋がってると思って勝手に書いてるんですよ。掌の生命線を辿った先のことを書いてるんですけど、生命線の先に行こうぜっていうのを改めて今書いたらどうなるんだろうなって。この歌詞に主人公はいそうでいないんです。全部他人行儀というか、自分が色んな人のつらさとかを、分かるよ分かるよって聞きながらずっと一人で歩いてる感じがする。でも最終的に、「似た者同士どこかで会えたらいいね」みたいにそういう救いがあってもいいんじゃないかなって。この歌詞を書いてみて、ここから先違うアプローチができるんじゃないかなって勝手に思ってるんですよね。だから自分の中でだけどここでちょっと歌詞の書き方の第二期が終わったと思ってて。また次に新しいアプローチが出来たらいいなと思ってる。
――ここまで聞いてやっと全てが消化された感じがします。
芥:俺、「比較対象」でアクは出し尽くしたって思ってたけど、全然だった。ここまでの1セットだったんだなって気がして。再録もしたけどそれは別に他意はなくて。単純にやりたくて再録したのもあるし、昔からやってる曲はやり続けたいから。それがこのアルバムでさらに引き立つんじゃないかなって思うんですよ。だからいわゆるキラーチューンとかって作りたい気もするんだけど、あれってお客さんとバンドが育てたものが結果キラーチューンになってる部分もあると思うんです。感情がぶつかりあって曲が育っていく結果みたいな。
野中:キラーチューンってそもそもなんなん?お客さんが楽しめて盛り上がる曲がキラーチューンなのか、でも他のアーティストのツイッター見ててキラーチューン完成!って書いてて聴いたらめちゃくちゃバラードだったりする。だからそのバンドの核となる感じの曲こそキラーチューンなんじゃないかなって。
芥:じゃあキラーチューンだらけだ。(笑)でもごく一般的なキラーチューンはうちにはないかも。盛り上がる曲もあるけどね。でもChantyをより深くするためのチューンが多いんじゃないかな。アクを出し尽くして、Chantyの次の作品が楽しみになる、そんなアルバムになった気がする。
千歳:次が気になるアルバムって面白いね(笑)。聴き終わったら次が気になるんだ(笑)。
芥:なんかね、すごく良いアルバムだと思うんだけどね、もう次を見たいんですよね。これもう小説みたいな感じなのかな(笑)。
成人:小説って芥さんらしいね
千歳:全曲ひっさげてワンマンツアーで物語を描いていきたいな
芥:さすが甘い歌声ロマンチスト(笑)
千歳:楽しみじゃない?もっと深くChantyの世界作れると思うもん
芥:楽しみだね。自分の中ではこのワンマンツアー、決して何かを塗り替えるためのものじゃなくって、掘り下げていくものだって思ってるから、延長線上に出来たこの曲達と一緒に作れるのが幸せだって思う。ツアータイトルも以前のワンマンツアータイトルに「2」をつけたってのもあって。
野中:正直ワンマンツアーをするかどうかも悩んだもんね。でもこのツアーは活動が止まる前から決まってた目標だったりするし、どうしてもやりたかった。
芥:今後のことを考えても、もしかしたらワンマンツアーはしばらくやらないかもしれない。まだわからないけど。脅しみたいな意味じゃなくてね。ただ、そのくらいの気持ちでこのツアーを決めたっていうのは素直なところです。
野中:相変わらず発表するとき緊張して胃が痛くなりました(笑)
芥:とにかく、Chantyをより深く表現する武器は揃ったと思うので、あとは一緒に作っていけたらいいな。さあ次はどんな曲作ろうね。
成人:俺も次回は曲持っていく予定です
一同:おーーまじか。
芥:千歳君は甘い歌声だったから成人君はどんな歌声なのか期待してます(笑)