Chanty 4th Anniversary oneman
『Chantyの世界へようこそ』
2017年9月16日(土)TSUTAYA O-WEST
文:糸永緒菓子
衝撃のニュースとともに活動休止が発表されたのが今から5か月前。たださえ不祥事や悲しいニュースの多かったこのシーンだが、まさかその中でChantyの名を見ることになるとは、思ってもみなかった。
「1人でも欠けたらChantyを辞める」そんな思いで走ってきた彼らが、4人で活動していくという苦渋の決断を下し、これからもChantyとして歩んでいくことを決めた。復活の舞台は毎年行っているTSUTAYA O-WESTでの周年ライヴだ。会場は彼らの帰りを待つ大勢のファンで埋め尽くされ、異様な熱気が漂っていた。
幕開けと同時に始まったSEでは、メンバーそれぞれが力強く繊細にインストゥルメンタル曲を演奏し、そのまま1曲目「ソラヨミ」へ。「無限ループ」、「やんなっちゃう」とライヴでの定番曲が続き、Chantyの世界が始まったことを感じさせてくれるセクションだ。「やんなっちゃう」では、「オイ!オイ!」とVo.芥が煽らずとも会場には割れんばかりの声が沸き上がり、ファンがいかにこの日を待ちわびていたかを痛感させられた。
「5か月間ご心配おかけしました。言いたいことはいっぱいあるんですが、僕たちはとりあえず曲をやりたいです皆さん。どうでしょう?」と芥が一声かけ、ファンからの声援を受け取ると間髪入れずに「おとなりさん」へ。キャッチ―な一面をのぞかせたかと思うと、鋭い激しさの光る「滅菌、消毒、絆創膏。」はGt.千歳の奏でる不安定なメロディが印象的な1曲。そして不安定なまま続く「今夜未明」で訪れる静寂に、観客はもちろんのこと誰しもが息をのんだ。
その後、「ねたましい」では地の底まで落とされるような救われない感情が映し出され、続く「比較対象」はこの日会場限定シングルとしてリリースされた楽曲。今までのChantyらしさは歌いながらも、がむしゃらにかき鳴らすようなロックサウンドで今までになく泥臭いアプローチをしていく。
「ひどいかお」「絶対存在証明証」とここまで言葉なくライヴが進んできたせいか、芥の歌う言葉の一つひとつがいつも以上にしっかりと胸に響いてくる。
そして「ミスアンバランス」でフロアと踊り狂えば、「かかってこいよ!!」と激しく煽られ始まった「衝動的少女」、芥はステージから身を乗り出しファンからの声援を全身で受け止めにいく。
続いて披露された「終わりの始まり」は、Chantyのすべてが始まった曲。先ほどのアグレッシブさとは打って変わり、しっかりと前を見据え力強く言葉を紡ぐ姿に胸が熱くなった。
そして狂気的で一途な愛を荒々しくも繊細に歌った「貴方だけを壊して飾ってみたい」を届けると、ぽつりと口を開いた芥。
「ただこの半年間見てきたものは夢でも希望でもなく現実でした。これで終わりにしましょう。」とつぶやき、始まった「不機嫌」。リリース後すぐに活動休止となってしまったため、あまりライブでは披露できていなかった楽曲だ。彼ららしく痛いところを突いて歌ったこの曲で、汚いものまですべて見せるように一音一音を叩き込む姿が印象的だった。
本編を一気に駆け抜け、ステージを後にしたメンバー。すぐさま盛大なアンコールが響き渡る会場に現れたスクリーンに、「比較対象」のMVとともにChantyからの嬉しい3つのお知らせが流れた。
そして4周年の記念Tシャツに着替え再び現れたメンバー。客席からの「おかえり!」の言葉に「ただいま。」と笑顔で返し、「もう一度旅を始めましょう
と「奏色」を演奏。張りつめた本編が終わり、少し緊張が解けたのかメンバーそれぞれ少しだけ柔らかな表情が見えた。
1番に口を開いたのは千歳。「ただいまって言える場所があるって改めて嬉しいことだと思うし、本当に俺たちは幸せです。ありがとう!」と千歳らしく純粋な気持ちを述べたかと思えば、「久しぶりのライヴで拓ちゃんがめっちゃ緊張してる(笑)。」と暴露。本編が終わりアンコールになった今でも「ずっと手が震えてる。」と言うほど緊張していた様子のBa.野中拓に、Dr.成人は、ファンからの声援に思わず涙ぐみながらも「ただいま!」と元気に答えた。
その後も、この日のお弁当は千歳が、日ごろからお世話になっている先輩SoanにTwitterでおねだりした叙々苑弁当であるとか、休止中にメンバーみんなでフェスに行った話、芥の新しく買ったギターがチーズケーキみたいでダサいだとか、いつもの彼らと変わらぬ終始和やかなトークで会場を湧かせた。
カメラが入ってるということは、そのうち映像が出ます!なのでお前らのもっとはしゃいでる姿を見せてください!と、「流星群」ではMCでの和気あいあいとしたトークのおかげか、おどけて見せるような余裕も見せたメンバーに、ファンもぴょんぴょん飛び跳ねる。そして「冤罪!冤罪!」と繰り返し声を上げる「冤罪ブルース」ではフロアももみくちゃになりながらめいいっぱい楽しむ様子が見えた。そして「今日1番のでかい声をここまでぶつけてください!
と始まった「m.o.b.」、「フライト」と、続けざまに会場中から演奏にも一切負けない声が上がり、演奏の終わるころには、新たなスタートが切られた4人の清々しい表情も見ることができた。
ファンからの声援を浴びながら、芥がゆっくりと口を開いた。
「ワンマンツアーとフルアルバムのリリースも決まりました。今日は本当にありがとうございました。もうやるしかないなと思って。今日たまたまここに集まれた人たちにありがとうを伝えて。楽しいイベントツアーもありますけど、僕たちとしてはまた全国奏でに行きたいなという思いがあって。本当におっかなびっくりですけど、行ってきますのでよろしくお願いします!」
「次が最後の曲になるんだけど、今思ってる気持ちは今書いたもので伝えたいと思って。すごい恥ずかしいことばかり言ってるなとは思ったけど。最後の曲を届けたいなと思います。それでは聞いてください。
そう芥の言葉で始まった「おまじない」は、Chantyには珍しく、シンプルな言葉と音で綴られた楽曲。
4人全員が前を向き、しっかりとこの場所へ戻ってきてくれたと思わせてくれるような最後だった。
曲が終わると同時に、芥がつぶやいた「Chantyの世界へようこそ」という言葉。いつもはライヴの幕開けに叫ぶのだが、この日は公演の最後の最後、ちゃんと戻ってきたということを1番実感させてくれた一言だった。
「これから4人になってはしまいましたけど、全てをなかったことにはできないし、全てを背負っていきたいわがままな連中なんですよ。Chantyは。楽しかったこと、つらかったこと。なので、これからどんな未来になるか分かりませんが、幸せな時間を届けてたいと思います。ありがとうございます。」
最後は5周年に向けて、の意味を込めてのお決まりのカーテンコールで幕を閉じた。
空白となった5か月間を埋めるように駆け抜けたこの日のライヴ。
正直、Chantyのワンマンライヴというと奇をてらったようなセットリストに、いい意味で綺麗に纏まった展開のようなイメージが強かったが、飲み込み切れない事態に直面し、切り抜けた彼らの泥臭さだとか、人間らしい一面が多く垣間見えた気がした。
4人となった彼らが、一回りも二回りも大きくなった姿を見せてくれたこの日。
2ndフルアルバムの発売、全国ワンマンツアーと、止まってしまった時間を取り戻すように、次々と新しい展開も発表された。Chantyを見たことがある人には絶対に今の姿を見て欲しいし、見たこともなくなんとなく触れたことがなかった人には今こそ彼らの音楽を覗いていただきたい。
今のChantyはその両者とも裏切ってくれるはずだ。