ギタリストに白を迎え新体制となったChantyが、ニューシングル【叫びたくなったから】をリリースした。
2019年7月17日発売 8th Single「叫びたくなったから」より、新作MV「白光」も公開された。
2ヶ月連続リリースの第1弾となる今作は、“ここに居る”という変わらぬバンドの覚悟と、この4人で導き出した新たな光に溢れた自信作となった。
そのメンバーへ、Chantyの今を探るロングインタビューを敢行。
夏はイベントツアー&ベルとのカップリング主催ツアーで全国を駆け巡り、9月16日に6周年のアニバーサリーワンマンを新宿BLAZEで行うことも決定している彼らの想いを受けとめて欲しい。
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「最初に音を合わせた時点で、“これは!”と感じるものがありましたね。」
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――新体制おめでとうございます!まずは、白さんとの出会いから伺わせて下さい。
成人「メンバーを見つけるにあたって、解散が決まっているバンドのギタリストをTwitterでひたすら探したんです。
何故“解散が決まっているバンド”だったかというと、ステージに立っている姿を観て声を掛けたかったから、まだライヴ予定があることが重要だったんです。
その中で、当時の白くんのアカウントに辿り着きました。
面識も無かったし名前も知らなかったけれど、ツイートを遡っていたらギターを弾いている動画があって、その演奏に“おっ?”と感じるものがあったので、2人(芥・野中)に『この人、意外とうちら寄りの音楽性を持っているかもしれないよ』と報告したんです。
でも、最初は全く興味を示してもらえず(苦笑)」
野中「“メンバーを探さなくてはいけない”と頭ではわかっていたんですけど、目の前の活動をやり遂げることにもいっぱいいっぱいだったし、視野を広く持って切り替えていくことがなかなか難しかったんですよね(苦笑)」
成人「最初に言った時はわりと反応が薄かったけれど、俺の中ではかなり気になる存在だったから、日を改めて『この前も言ったギタリストの話だけどさ』と再度推してみました(笑)」
白「2回推してもらえて良かった・・・(笑)」
一同「(笑)」
芥「“成人くん、凄いな”と思いましたね。
活動を止めるつもりはなかったし、サポートでやるにしろ新メンバーを入れるにしろ、活動休止という形にはしないと決めていたものの、なかなか動き出せなくて。
当初は、9月の6周年ワンマンまでに新メンバーを見つけられたらと考えていたので、白くんが決まる以前に入れていたスケジュールも多かったんですよね。
そのスケジュールをやり遂げるだけでも大変な中で、白くんを発見した成人くんは本当に凄い。
・・・正直、新しい形にならなくてはいけないということを、認めたくない気持ちもあったんです。」
野中「そう、怖い気持ちもあるし。」
芥「新体制になった今、振り返るのもあれですけど。
脱退が決まったのが、ライヴの内容も日増しに良くなって充実していた時期だったから。“このままどんどん行こうぜ!”みたいな状態の中で決まった脱退だっただけに、余計に飲み込みづらいところがあったんです。」
成人「脱退ライブの4月10日に向かう中でも、実感が湧かなかったですからね。」
――当日のライヴが終わっても、すぐには実感が持てませんでした。
芥「ある意味、それが幸いだったんでしょうけど。蝋燭が消える前に、一瞬ポッと強い炎を放つ瞬間があるじゃないですか?
俺は、それを疑っていたんですよ。
“この燃え上がり方は、燃え尽きてしまう前兆なんじゃないか”って。
でも、現状そうはなっていないので良かったですね。」
――白さんという逸材に巡り会えて何よりです。
野中「最初に音を合わせた時点で、“これは!”と感じるものがありましたね。
実は、その時に入ったスタジオは、環境的にあまり良い場所ではなくて。
しかも、その日の僕は自分の楽器ではなくスタジオのベースをレンタルして弾いたんですね。
そのベースがもう、“何十年、弦を張りっぱなしにしているんだろう?”と思うような状態で、恐ろしいくらいポコポコな音を鳴らしながら音合わせをして(苦笑)」
芥「俺もちょっと喉の調子が良くなくて、恐ろしいほどポコポコな声を出して(苦笑)」
白「僕も、その日のために音づくりや色々な準備をして行ったんですけど、いざアンプに繋げてみたら全然良い音が出なくて。
“ヤバい!”と思いつつ、ポコポコな音を鳴らしました(苦笑)」
一同「(爆笑)」
――初の音合わせはポコポコだった、と(笑)
野中「白くんは、凄くしっかり準備をしてくれていたんです。
指定していた以外の楽曲も、覚えてきてくれたし。
あの日のスタジオは凄く心に残った。」
成人「とにかく白くんのやる気が凄くて、それを俺ら3人は目の当たりにしたので。
ミスをしたかどうかとか、そういう以前の話で、そのやる気に凄く押されましたね。」
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「“きっと自分はこのバンドに入るべきなんだな”と直感が働いたんです。」
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――白さんは、Chantyから声が掛かった時にどう思われましたか?
白「今までは、直感で動くよりもわりと色々なことを深く考えて慎重に選んで進んできたタイプの人間なんですけど、Chantyに出会った時“きっと自分はこのバンドに入るべきなんだな”と直感が働いたんです。
勿論、飛び込むことに対して怖い気持ちもあったし、“一旦、ちょっと考えてみよう”と思ったりもしましたけど、やっぱりファーストインスピレーションが当たっていたし、それに従って良かった。
実際に活動を始めてみて、改めてそう思えるバンドです。
それと、その時はまだFIXERも活動していて“この状況で新しい活動を進めだすのは良くないんじゃないか”という葛藤もあったのですが、そこは皆が『今は自分のバンドに集中して』と言ってくれたので、全てを中途半端にせずやり切れたことは本当に感謝していますね。」
――運命的なものを感じますね。音合わせの後は、お互いに“これで決まったら良いな”と?
野中「お互いのヴィジョンなども話し合って、改めて『お願いします』と言って決まりました。
他のバンドの場合は、いろんなギタリストとスタジオに入ったり、何人か候補がいる中から選ぶのが普通だと思うんですよ。
でも、僕らは白くんとしかスタジオに入っていない。」
芥「一発で決まりました。」
成人「最初に声を掛けて、そのまま決定。」
――お話を伺うほど、成人さんの先見の明が素晴らしいです。
芥「本当ですよね。たぶん、俺が一番、腰が重かったです。」
成人「そうかもしれない(笑)。
俺と拓ちゃんの中では『すぐにでもお願いしたい』という結論が早かったけれど、その段階での芥さんはまだ少しモヤモヤが残っている印象だった。」
芥「それは誰とスタジオに入ったとしても同じだったと思います。
俺ね、ここ数年で“人を信用する”ということが本当に難しくなってしまって・・・。」
野中「あまりにも真っ直ぐな人間(白)が来てしまったものだから、逆に不安になったんでしょうね。」
芥「そうなんですよ。“嘘みたいだな、本当かな?”って。」
――年齢を重ねるごとに、信じることって難しくなりますよね。
野中「(疑うことも)生きていく術のひとつですからね。」
芥「でも、スタジオで【インピーダンス】を演奏している時に、ふと白くんを見たら、下を向きながら物凄い笑顔になっていたんです(笑)。
『どうしたの?』って訊いたら、『楽しくて!』と答えてくれた。
その言葉を聞いた時に、“Chantyの曲を演奏しながらこんなに笑顔になってくれる人なら、きっと大丈夫だ”と自分の中で固まったんですよね。
勿論、プレイ面に関しても、このバンドが目指す像にふさわしい音を出してくれていたから申し分なかったですし。
自分の中での最大の決定打は、笑顔でした。」
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「白くんは真面目バカ。本当に真っ直ぐで真面目なんだなと思います。」
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――3人から御覧になった白さんはどんな方なのか、少し教えて頂けますか?
野中「“御両親からの愛情を、たくさん受けて育った子なんだろうな”と思います。」
成人「確かに、そういうタイプだね。
自分の中では、“真面目バカ”という印象があります。
ゲネプロの日、白くんと連絡が取れなくなったことがあったんです。
その日はライヴハウスを借りてのゲネで、開始時間になっても全く連絡がつかなくて、『どうしたんだろう?』って皆で心配して。
30分くらいしてようやく連絡が来たから、『どうしたの、大丈夫!?』と訊いたら、『寝坊しました・・・』って(笑)。
ゲネプロのために曲を覚えたり音作りをしたりしていて、集中するあまりに徹夜して、爆睡してしまったみたいで。
それを聞いた時、本当に真っ直ぐで真面目だから故なんだろうなと思いましたね。」
芥「Twitterにも書いたんですけど、俺からすると座敷わらしみたいな印象です(笑)。
この間、4人で初めてツアーに出たんですけど、何だか最初から一緒に居たような感覚になって。
スッと中に入ってくる人だな、と思った。」
――波長が合う?
一同「そう思います。」
芥「衣装さんにも、『雰囲気が馴染み過ぎている』と言われました。」
――ええ。最初にアーティスト写真を拝見した時、何の違和感も無くしっくりきていて驚きました。
芥「そうなんですよね。あまりにもしっくりきてしまったから、余計に勘ぐっちゃった(苦笑)」
野中「人間って、上手いこと進み過ぎると不安になりますからね。」
芥「今でも不安ですもん。音源も良い感じに完成したし、ライヴも良い感じにできているし・・・もう、毎日が不安(苦笑)」
一同「(笑)」
野中「この体制になって初のライヴだった6月4日が終わった後も、『今日が良いライヴだったから、この先で何か起こりそう』と言っていたよね(笑)」
――6月4日は初めての会場で初めての体制という何かしら起きてもおかしくない状況の中で、素晴らしいライヴでした。あの日は緊張されましたか?
芥「俺は、別にしなかった。」
成人「俺も、普通でした。」
野中「普通に緊張しました・・・(笑)」
一同「(爆笑)」
野中「元々、緊張しやすいタイプなので(笑)」
白「僕も、めちゃくちゃ緊張していましたね。」
――1曲目から新曲【ららら】で最新のChantyを提示したことによって、オーディエンスが安心できたのではないかと思いました。
芥「最初に、新しい曲をやりたかったんです。
【ららら】を軽くリハでやっていた時点から、俺は勝手に『6月4日の1曲目にやる』と言っていました。」
――TwitterのRT企画によって持ち時間が50分になったことで、3MANに匹敵するボリュームで新体制をお披露目できて良かったなと。
野中「ありがたいですよね。白くんからしたら、嬉しい反面、ちょっと辛かったかもしれないけど(笑)」
白「確かに、嬉しさと同時に2曲増えたことへのプレッシャーもありました(笑)」
芥「白くんからしたら全てが新曲だから、その2曲は大きいよね。」
――ライヴが進むにつれて白さんがのびのびとプレイしているのが伝わってきて、嬉しかったし安心しました。
白「もっと様子見的に冷ややかな目で観られるだろうなと覚悟をしていたし、最初のうちはそれも仕方がないという気持ちで臨んだんですけど。
思いの外、お客さん達が温かく迎えてくれたので、それによってほぐれていったところが大きいです。」
芥「確かに、凄く温かかった。本当にありがたかったですね。
拓ちゃんの誕生日に三重でライヴをして白くんの加入を発表しましたけど、正直『ちょっと(加入発表が)早くないか?』という空気を感じたりもしたので。」
野中「実際のところ、メンバーが抜けて約1ヶ月後のライヴで新メンバーの加入を発表って、ファンの人達からしたら複雑な想いもあるだろうし。」
――でも、運命的な出会いがそのタイミングであったのだから掴むべきです。
芥「確かに。自分達としては、この場所に居続けるためにちゃんと動いていて良かったなと思っています。」
――あの日のMCで話された「自分の中の“好き”を大事にして、受け取りたい時に受け取って、観たい時に観に来てもらえたら」という言葉が凄く響いたし、バンドの想いは伝わったと思うんですよ。
芥「うん、あの時に直接伝えられて良かったです。」
――変化を飲み込むまでに掛かる時間は、人それぞれですからね。
野中「そうですよね。バンド的には、このタイミングで決まって本当に良かったです。」
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「何度も再確認するって、面倒くさい彼氏みたいな感じがしません?」
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――ライヴでも披露された新曲2曲を収録した新音源【叫びたくなったから】がリリースされますが・・・直球且つChantyらしいタイトルになりましたね。
芥「俺もそう思いました(笑)。別にシャウトをしているような曲では無いけれど、ピッタリなタイトルになったと思います。
【ららら】は、アコギをかき鳴らしている時に何となく生まれたものを皆で固めていきました。
【白光】は、4人で好きなバンドのライヴを観に行ったんですけど、その直後に白くんが『こういう曲をやってみたい』と持って来てくれた曲を膨らませて作りました。」
――芥さんは常々「歌っているのは日常だ」と仰っていますが、この作品はまさに“人間そのもの”という印象を持ちました。【ららら】から【白光】への曲間の繋がりも相まって、2曲でひとつなんだなと。
芥「そうです!伝わって良かった!」
――2曲ともオーディエンスへのメッセージが込められていますが、【ららら】はバンドから、【白光】はもう少しパーソナルなところからのメッセージではないかなと。
芥「うん、確かにそういう感じがしますね。本当は、あまり重い感じにはしたくなかったんですけど。」
――重い、ですか?
芥「以前にも、そういうタイミングが何度かあったじゃないですか?
始動当初の【終わりの始まり】や、【比較対象】、【3.0.17】みたいな、シリアスな覚悟系はもういいんじゃないかと思っていたんです。
だって、立ち返ったら大体同じことを歌っているわけで。」
野中「ベクトルというか、向いている方向的にはね。」
芥「それを何度も再確認するって、面倒くさい彼氏みたいな感じがしません?」
一同「(大爆笑)」
野中「確かに、それは難しいところやな(笑)」
芥「もっとフワッとした自分の世界丸出しの歌詞を書きたかったのに、曲の印象や今の状況などをトータルで踏まえたら、また覚悟系の歌詞しか浮かばなかった。
結果的には、2曲とも非常に満足のいく形に仕上がりましたけどね。」
――聴き手側からすると、「言葉にしてもらえて良かった」と感じる部分が大きいと思いますよ。
芥「そうだと良いんですけど・・・重くなってしまうんですよねぇ。
俺としては、メンバーのプレイのほうにも関心を持ってもらいたいから複雑で。
【ららら】の楽器隊はめちゃくちゃカッコいいし、【白光】のストレートに駆け抜ける感じも、成人くんが練習を重ねて成長した姿も、【ららら】ではキメキメで【白光】ではChantyで一番動いている野中さんのベースも、とても好き。
白くんのプレイも、凄いんですよ!」
野中「確かに凄いよね。宇宙を感じる。」
白「【ららら】のプレイね(笑)」
――白さんは、物凄く色々なことを勉強して弾いていらっしゃるんだろうなと感じました。
白「やっぱり、これまでに自分がやってきた音楽とChantyの音楽は違うので。
元々好きではあったけれど、実際にはやってこなかったものだから、このバンドでやるにあたって色々な知識を漁ったりしましたね。
自分なりに解釈をしてChantyでどう活かせるかを考えたり、“引き出しを増やそう”という意識が強かったです。
ただ、その場その場で引き出しを開けているから、忘れてしまうこともあるんですけど(笑)」
一同「(笑)」
――音源からも、非常に勉強熱心な方だと伝わってきました。
野中「本当にそうなんですよ。」
白「嬉しいですね。」
――今作の制作にあたって、各自が意識したことやこだわったポイントなどを教えてください。
成人「ドラムに限った話になりますが、自分の中でこの2曲は180度に近いくらい印象が違うので、音の作りも極端に変えて別個のものを鳴らすという部分にこだわりました。
それが上手いことハマったんじゃないかな。
白くんが弾くギターを聴いてテンションが上がっていたし、とにかく叩き切ろうという意識が強かった。
“楽しく演奏して勢いが出れば、自然とそうなるんじゃないかな”と思いながらレコーディングしましたね。」
――演奏を聴いても、こうしてお話していても、成人さんは頼もしさが増した印象があります。
芥「そうなんですよ!」
野中「僕らから見ても、成人くんは一皮むけたと思います。制作に関して、僕は考え込まないようにしました。
例えば、フレーズというのは考えれば何パターンでも出てくるものじゃないですか?
そうではなくて、ファーストインスピレーションで、その瞬間に浮かんだものを弾くようにしましたね。
手癖もあるし、4人でスタジオで合わせる中で生まれたフレーズを、変に手を加えずにそのまま採用したりしています。」
――最初に浮かんだフレーズには、特別な力がある場合が多いようですし。
野中「そうなんです。シンプルな考え方でやった結果、良い感じにハマったのではないかと思います。」
芥「野中さんのベース、ステージでの動きもつけやすい良いフレーズなんですよ。
6月4日も、【ららら】での俺はアコギも弾いているから、自分に一番焦点が当たるくらいの気持ちで演奏していたんですけど。
ふと下手を見たら、明らかに野中さんが一番カッコ良くてジェラシーを感じましたね(笑)」
野中「ありがとうございます!(笑)」
――白さんは、Chantyでの初レコーディングはいかがでしたか?
白「レコーディングのスタイル的にも、初だったんですよ。
これまではずっとデスク中心でレコーディングをするタイプでしたけど、Chantyは『いっせーのせ!』で録るスタイルがあって。
その録り方ならではのグルーヴ感が生まれたりもして、凄く良いなと思いました。」
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「“ここに居る”ということが一番の覚悟だと思うし、バンドが続いているからこその瞬間があると思うから。」
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――【ららら】は演奏も歌も緩急があって、次々と表情が変わっていく中に1本の強い芯が通ったChantyならではの要素が詰まっていると感じました。
白「【ららら】は、僕の中でも“Chantyっぽい曲”という印象がありました。
感じた雰囲気のまま、あまり考え込むことなく自然とフレーズが付けられたし、すんなり録れましたね。」
芥「歌詞に関して、これはメンバーにも伝えましたけど、【終わりの始まり】という曲は“繋いだ手 夏の空”という一節で終わっていて、【ららら】の頭が“あの日見た空がこびりついて 泣き出せないから苦しいんでしょう”なんですね。
正直、出会った時の衝撃というのは超えられないものだと思うし、誰しも皆、その時に見たものを大切にしているじゃないですか?
だから、『それも含めて連れて行きたいです』という気持ちを書きたかった。
Bメロの“思いのままに奏でてよ”という一節には、嬉しい・悲しい・好き・嫌いといった自分のどんな感情にも素直に生きて欲しいという想いを込めています。
サビ終わりの“笑うことも泣くこともやめないで”の部分も同じですね。
あと、Cメロの“誓ったり背いたり それでも歩いてる”というのは・・・バンドって何か目標を立てて言葉にしたり、強い覚悟を提示すればするほど、いつかそれに背く瞬間が来てしまったり、やんわり背いていってしまったりすることってありますよね。
ある意味、今のChantyもそうだと思うんです。
活動当初、『このメンバーでなければ』って口にしていたこともありますし。
それでも、“ここに居る”ということが一番の覚悟だと思うし、バンドが続いているからこその瞬間があると思うから。
そのこと自体が何かに背いていたとしても、僕らはそれを背負うつもりなので・・・やっぱり、覚悟系になってしまいましたね(笑)」
――その意思表明をしないまま、「言わないでも伝わるでしょう?」という進み方をされるほうが嫌だと感じるファンも多いのではないかと思います。
野中「言わないと伝わらないことのほうが多いですからね。」
芥「そう、言わないと伝わらない!なので、言ってみました(笑)」
成人「その節々で、芥さんが意思表示をしていることに意味があるのかもしれないですよね。
それによって、俺ら自身も再確認ができるし、お客さんにも伝わるだろうし、大事なんじゃないかなと思います。」
――ファンの方々はChantyを好きでついてきて下さっているのだから、必要なタイミングでは覚悟系も書かれて下さい。
芥「俺らも、(ファンの人達を)好きなので。・・・言葉にすると恥ずかしいな(照)」
一同「(笑)」
芥「だって、『Chantyに限って!』というところから、こんなに色々なことが起きているわけですよ。
それでも、今の俺らに何かを思ってついてきてくれている人達のことはそりゃ好きですよ。
今回のひとつの変化って、また違う人生が交わる変化じゃないですか?
【ららら】に込めたメッセージは、Chantyを応援してくれている方々だけに向けているものではないんですよね。
FIXERというバンドがあって、Aikaというギタリストが居て。
Aikaの存在を観て何かを描いた人達が、それを持ってChantyに来るかもしれないし、もしかしたら『Chantyなら行かない』という人も居るかもしれないけれど、Aikaと出会って彼に何かを描いた人達が少しでも報われて欲しいし、『俺らは、いつか交わるように奏で続けますよ』というメッセージを込めました。
綺麗事に聞こえてしまうかもしれないけれど、俺は本気でそれを願いたいので。
Aikaがあったから白くんになったわけだし、Chantyも千歳やShia.と歩んできた道があったからこそ今こうして白くんが入って、これからも続いていけるわけだから。」
――白さんの人生も、Chantyというバンドの歩みも、これまでの何が欠けても今の形にはなっていなかった。
白「本当にそうですよね。」
――Chantyが存在し続けている限り、これまでに出会った人達とまた交わるチャンスはいくらでもある。“在り続けること”が何よりも大事だと改めて感じます。
芥「そう思います。だから、これは遠い遠い未来の話ですが、もしも自分達がこのペースで活動ができない時が来たとしても、月1回でも年に数回でも存在し続けられる形を探したいなと思ったりもするし。
それくらいの気持ちでやっています。」
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「【白光】は、“この4人でやったからChantyになった”みたいなイメージの曲。」
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――【白光】は、曲全体の疾走感が本当にカッコいい1曲です。
芥「駆け抜けましたよね。野中さんが、駆け抜けるにしては駆け抜けていないのが良いんですよ(笑)。
スタジオで曲を揉んでいる時、野中さんはずっと『これは変に意識せずに駆け抜けたほうが良いな!』と言っていたんですけど・・・。」
野中「言っていたね(笑)」
芥「でも、完成してみたら一番駆け抜けていなかった(笑)」
野中「気持ち的には駆け抜けようと思っていたけれど、実際に弾いてみたら“こうやりたい!”というものが出てきてしまって。」
――そこでも閃きに素直に。
野中「そうです。“こっちのほうが絶対に良い!”と思えたから弾いたんですけど、難しいことをやり過ぎて後悔するという(苦笑)」
白「さっき【ららら】はChantyらしい印象だったと話しましたけど、それに比べて【白光】は“もしかして、これはChantyらしさから外れてしまうかな”って最初は不安だったんです。
だけど、アレンジ作業を進めていく中で芥さんの歌声とメロディーが入ったら、“あ、大丈夫だ!”と感じられて。」
――ええ、「Chanryらしくない曲」という印象は全く持たなかったです。
芥「良かった!」
白「【白光】は、“この4人でやったからChantyになった”みたいなイメージの曲です。」
――どんな楽曲であっても“Chantyでやってみたい”と思ったものをこの4人で演奏したら、Chantyらしくなるのではないかと思います。
一同「確かに!」
芥「Chantyの場合、個人が原曲として作ってきた部分よりも、スタジオでメンバー同士の意思疎通の中で固めて生み出す部分のほうがはるかに大きなウエイトを占めているので、今はバンド名義でのクレジットにしているんです。
作曲者を表記することによって、偏った見られ方をする可能性があるのが凄く嫌なんですよね。
勿論、リスナーからしたら誰発信の曲なのかがわかることも楽しみのひとつだということもわかっているつもりですし、それも正しいことです。
でも、楽曲はひとつの存在としてフラットに聴いてもらいたいです。俺らは、そういう作り方をしているわけだから。
どんな曲でも、この4人で揉めばChantyらしくなっていくんだろうということは、俺も改めて感じましたね。」
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「“今を生きているつもりが、いつの間にか昨日の中に閉じ込められてしまって、大事な今が擦り切れて過去になってしまうのは嫌だ”という気持ちを書きました。」
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――個人的には、“大脱走”という言葉のハマりと響きに凄く驚きました。
白・野中・成人「確かに、ビックリした!(笑)」
芥「実は、最初は『だいだっそう!』とハッキリ歌い過ぎていて、自分で“ダサいな!”と思って録り直したんです・・・(笑)」
一同「(爆笑)」
白「歌詞とメロディーのハマりが抜群に良いですよね。」
芥「そう、めちゃくちゃ気持ちが良いんですよ!歌詞で見るとダサいんですけど。」
野中「ダサい?」
芥「“大脱走”って、ハリウッドの古い映画で顔が泥だらけの囚人がバーっと逃げているような感じがしない?(笑)」
白「言わんとしていることは、何となくわかる(笑)」
――ちょっとダサめのフォントで、画面いっぱいに『大脱走!』と出てしまうような?(笑)
芥「そうそう(笑)。だから、歌詞を読んで皆が何も言わなかったら“大脱走”でいこうと思っていました。
で、歌詞を出してもメンバーから何も言われなかったから、そのまま採用となりました(笑)」
野中「基本的に、歌詞に文句は全く無いんです。芥さんならではの世界観もあるし、納得させる力があるから。」
成人「毎回、わりと不安そうに歌詞を出してくるんですけどね。」
野中「そう。『何かあったら直すから』と送ってくるけれど、説得力しかないし。
本人は不安かもしれないけれど、しっかりと読んだ上で文句が無いから何も言わないだけです。」
成人「バンドで歌詞に口出ししたことは、おそらく一度も無いですね。」
野中「無い!もし、最初の『だいだっそう!』とハッキリ発音したバージョンの歌で送られてきていたとしても、文句は言っていなかったと思います。
“あぁ、大脱走がポイントなんだな”と思っていただろうな(笑)」
芥「本当にありがたいことです。歌詞に関しては、音源の話の最初に言って頂いた『【ららら】はバンドからのメッセージで、【白光】はもう少しパーソナルなところからのメッセージではないか』というのが正解だなと思います。
“気づけばずっと昨日の中にいました”というのは、バンドであれ人生であれ、“今を生きているつもりが、いつの間にか昨日の中に閉じ込められてしまって、大事な今が擦り切れて過去になってしまうのは嫌だ”という気持ちを書きました。
自分の中の真実にうずくまっている感じです。
【犬小屋より愛をこめて】という曲でも“逃げて隠れて息を止めて”と歌っていますけど、時を経たことでこの人は少しスレてしまいましたね(笑)。
タイトルに関しては、この曲が上がってきた時に薄もやがかった光が見えたから【白光】と付けたんですよ。
走る先に光があって、その光が引っ張ってくれるようなイメージ。歌詞よりも先にタイトルが浮かびました。
逆に、【ららら】は歌詞が強い曲だから、強い覚悟の曲だと身構えて聴いて欲しく無い気持ちもあったし、いつもどおり歌を口ずさんでいる感じにしたくて、【ららら】と付けました。」
――なるほど!この曲を通して、その光を見せてくれたのが白さんだったということですから素敵です。
芥「本当に!今回、どちらの曲でMVを録るか、めちゃくちゃ悩んだんです。
先に【ららら】ができて、その時点でもう俺の頭の中では【ららら】のMVを撮る体で居たんですよ。絶対にカッコいい作品になるなと思ったし。
でも、【白光】が完成した瞬間に“これはどうしよう”と。
できることなら2本撮りたいけれど、正直それは費用面でも難しいし、数日間悩みましたね。
最終的に決め手となったのは・・・【ららら】が完成した時点では、まだ俺はちょっと迷いの中に居たんですね。
それに対して、【白光】は4人でライヴを観に行って光を感じて、そこから生まれたものを皆で形にした曲だったわけで、迷いの中に居る時にできたものよりも光があるものを映像にしたほうが良いのではないかと。
俺にとっては、ここ数ヶ月で一番の決断でしたね。
Twitterにも、『数日ものすごく悩んだことに決断を下しました。Chantyの未来にとって明るい決断になりますように。』と呟いたくらい。
そうしたら、何人かのファンの人達が“何か悪いことが起きたんじゃないか”と捉えてしまったみたいで心配されてしまって(苦笑)。
心配でモヤモヤしてしまっていると困るので、この場を借りて、『何か悪いことがあったわけではなく、MVの楽曲を選んでいただけです』とお伝えできたらと思います(笑)。
・・・本当は、2曲とも撮りたいんですけどね。」
――この作品は、それくらいの自信作ということ。
芥「本当に、良い意味で自信作です!」
白「新体制での最初の作品にふさわしいものになったと思います。」
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「いずれはまたあの場所に帰りたいけれど、もし加入してくれるのであれば一緒に新しい目標を掲げたいという想いが強かった。」
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――8月にもリリースのご予定がありつつ、夏も精力的にライヴ活動を行っていかれるわけですが。このメンバーで数本のライヴを経て、今の調子はいかがですか?
芥「良い感じです(笑)」
一同「(大爆笑)」
野中「“良い感じ”って、言い方を変えたら“何も問題が無い”ということですからね。それが一番良いことだと思う。」
成人「本当に、白くんがスッと馴染んでいるんですよ。」
芥「今まわっているイベントツアーは、かなりの強豪揃いで。
だからこそ、俺は“バンドがこんなに良い感じということは、どこかで足元を掬われるのでないか”と毎日意識しながら生きています(笑)」
白「慢心は良くないですからね。」
芥「一瞬の油断が危険です。セットリストにしろステージングにしろ、ひとつ気を抜いたら全部持って行かれるくらい対バンが皆強いので。」
――新体制で初のイベントツアーがそんな環境であることは恵まれていますね。
一同「本当に!」
――この夏の先に待っているのは、新宿BLAZEワンマンですし。
芥「そうです!白くんからしたら、いろんなプレッシャーがあるだろうし、もういい迷惑なんじゃないかと思う(笑)」
白「あはははは(笑)。でも、凄く楽しいです。
息つく暇もないですけど、純粋に楽しいから、自分としては“めちゃくちゃ頑張っているぞ!”という感じでもないんです。
プレッシャーは感じるけれど、レコーディングもライヴも楽しんでやっていますね。」
――「楽しい」というお言葉を聞けて安心しました。9月16日に関しては脱退のことなどで周年恒例のTSUTAYA O-WESTを確保できなかったこともあると思いますが、そこで新宿BLAZEという選択をされたのは何故なのでしょう?
芥「これも、覚悟でしたね。4月10日のワンマンで伝えた通り、自分達の弱さが元でO-WESTを確保できなかったところから始まって色々考えました。
もしかしたら、どうにかしてO-WESTを押さえることもできたかもしれないんですけど、正直、白くんにO-WESTを重ねることに迷ってしまったところもあります。
『毎年、周年はO-WESTで』ということを、新しく交わってくれる人間に重ねていいのかなって。
いずれはまたあの場所に帰りたいけれど、もし加入してくれるのであれば一緒に新しい目標を掲げたいという想いが強かったんです。
『Chantyで同じ人生を見てくれ』と言っている人に対して、現状維持の夢だけを見せるのは違うなって。『新宿BLAZEでキャパは大きくなるけれど、そのくらいの勢いで一緒に行こうぜ!』と言えなくてはダメだなという気持ちもありました。
それで、いつかは実家に帰るような感覚で白くんを連れてO-WESTに立つことができたらいいな。
俺個人としては、そう思っています。」
――白さんの中にも、「Chantyで、このメンバーとであれば、怖いものなくやっていける」という覚悟と確信があるのではないですか?
白「まさに、そういう気持ちでいますね。僕個人は、わりとビビリがちなタイプですけど、“Chantyだったら!”という自信はあります。」
野中「たぶん、Chantyは全員ビビリなんです。4人のビビリが集まったことで、大ビビリが小ビビリくらいになったんだと思う(笑)」
一同「(大爆笑)」
芥「バンドとして進んでいく上で、適正なビビリになりました(笑)」
野中「少なからずビビッていないとダメだとは思うんですよ。」
芥「でも、女性はオラオラしている男性が好きじゃないですか?」
――そうですか!?
野中「高校の時くらいまでは、そういう男子がモテたような気はする(笑)」
芥「本能的にオラオラしている人が好きなのかな、って(笑)」
――若い時は、引っ張ってくれる男性が好きな女性が多いのかもしれませんね。
野中「僕らは、1個人としては全然引っ張らないタイプなので。」
一同「(大爆笑)」
野中「ただ、これもバンドとして4人集まったら小引っ張りくらいにはなります(笑)」
――ちょうど良い引っ張り具合に(笑)
成人「最初、小ビビリな自分はBLAZEワンマンを反対していたんです。
でも、芥さんがオラオラ系になったので、自分もそこに引っ張られましたね。芥さんの話に、凄く納得できたから。」
野中「BLAZE、大きいですからね。でも、そこでも良い景色が見られるようにならないと。」
――昨年「O-WESTをソールドアウトする」という長年の目標を叶えられたわけですし、色々な意味で良いタイミングなのではと感じます。
野中「確かに。目標が叶うって、怖いですよね。凄く嬉しい反面、冷静に考えると恐怖心が生まれる。」
一同「わかる!」
野中「明確な目標が無いと、ファンの人達も不安になると思うんですよ。
自分達はそんなつもりでなくても、『このバンドは何に向かっていくのか、ただ趣味のように淡々と続いていくのか』と思われても仕方がなくなってしまう。
だからこそ、次なる目標である9月16日の新宿BLAZEワンマンという夢を皆で一緒に叶えたいと思います。」
取材・文:富岡 美都(Squeeze Spirits/One’s COSMOS)