積極的なライヴ活動で全国を駆け巡り、めざましいスピードで進化を続けているChanty。
2ヶ月連続リリース第2弾となるニューシングル『嫌いなこと』は、“心震わせるメロディー”と“4人だから生み出せるライヴ感”というバンドの武器を存分に発揮した必聴作となった。
9月16日 新宿BLAZEで開催される6周年アニバーサリーワンマンを目前に控えた彼らに、作品と現在の心境についてじっくりと語って頂いた。
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イベントツアーと共同主催ツアー、それぞれ違った緊張感の中で良いライヴができています。
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――新体制になってまだ2ヶ月ほどですが、非常に密度の濃い日々を送っていらっしゃいますね。
白:本当に“まだそれしか経っていないんだ!”と思うくらい、物凄く濃い毎日です。
成人:夏という季節的にもツアーが多い時期に、しっかりと実りある活動をできていることが一番の幸せだなと感じます。
野中:個人的に、ちょっと気になっていたことがあって。
白くんは、加入ライヴを東京でやってからすぐにツアーへ出てしまったので、実は都内ではあまりライヴをしていないんですよ。
そこに関して、白くん的に不安だったりはしなかったかなと、ツアー中にふと思ったんです。
白:不安は、全然無かったなぁ。ツアーでメンバーと一緒に居る時間が長いほうが自分自身も成長できるんじゃないかと考えていたし、俺はすぐにツアーで良かったと思ってる。
野中:それなら良かった!すぐにツアーだったからこそ、一気に馴染んだところもあっただろうしね。
――ツアー先でもメンバー揃って行動することが多いですか?
成人:おそらく、他のバンドさんよりも圧倒的に多いと思います(笑)。
野中:ホテルに着いたら各自で自由に過ごすバンドさんが多いみたいですけど、うちの場合はすぐに「ご飯に行きます?」「じゃ、ロビーに集合で!」みたいな連絡がまわったりしますね(笑)。
――素敵なことです。そういう場での何気ない会話の積み重ねが大事だったりしますし。
白:そうですね。音楽面だけでなく人間的にも馴染めていないと、そういう部分がステージで表れてしまうと思うし。
だから、加入後すぐにツアーの予定が満載で良かったです。
しかも、前回はイベントツアーで、今まわっているのはベルとの共同主催ツアーなので、心構えが少し違うんですよね。
イベントツアーは“挑戦”というか、「やってやろう!」と挑んでいる感覚だったけれど、主催になると「自分達がしっかり盛り上げていかないと!」という意識が芽生える。
芥さんとも「それぞれ違った緊張感の中で良いライヴができているね」と話しました。
――私は高田馬場PHASEでの2MANを拝見させて頂きましたが、個人的にChantyのライヴの一番の魅力だと感じている“メンバーの熱量の一体感”という部分でも白さんが存分に力を発揮して表現していらして、改めて凄いなと感じました。
野中:本当にそうなんですよ。
成人:熱量の一体感的な部分というのは決め事があってやっているものではないし、そこに関して自分達が白くんに何か指示をするようなこともないので、ライヴを重ねていく中で彼自身が空気を汲み取ってくれた結果だと思います。
それが彼のセンスであり、良いところなんだろうな。
白:合うんだろうねぇ、Chantyが(笑)。
一同:(笑)
――各地の反応はいかがですか?
野中:良い意味で、何も変わらないですね。
成人:うん、同じことを思った。
野中:正直、メンバーが1人変わったことで、今までとは違うバンドとして見られるのではないかと不安に思っていたところもあったんです。
でも、全くそんなことはなかったですね。
――これまで通りの反応をもらえるというのは、一番嬉しいことだと思います。
成人:本当に。絵面にしても音にしても、普通に考えたら変わっているはずですけど、それを変わったと感じさせない絶対的な反応が凄いなと思っています。
――ChantyはChanty、という揺るぎないものがあるからこそでしょう。
成人:そうですね。絶対的なものがあるからこそ、そういう反応をもらえているのかなと思います。各地、良い熱量でまわることができていますね。
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ツアーをまわる中で今まで以上に強く感じたのは、ファンの人達が本当にChantyの楽曲を愛してくれているということ。
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――個々が1アーティストとして感じていることはありますか?
野中:個人としてなのかはわからないですけど・・・今まわっている共同主催ツアー中に、実感したことがあって。
例えば“ここの部分の曲間はこんな感じで・・・”みたいに、事前に頭の中でライヴのシミュレーションをしているものじゃないですか?
でも、シミュレーションどおりにできたにも関わらず、“予想に反して、何となくハマらなかったな”と感じることが時々あるんです。
それをファンの人達にフォローして助けてもらったなと感じた瞬間が、福岡の2日目にあって。
バンドというのは自分達のためにやっているところもあるものですけど、ファンの人達も一緒にそれを支えて共感してくれて・・・本当に、“一方通行ではないんだな、一緒に作り上げているんだな”と実感しました。
勿論、これまでも“一緒に作り上げている感覚”というのはありましたけど、自分自身がちょっと履き違えていた部分があったかもしれない。
周年公演とかに皆が来てくれて、一緒に良いライヴをして感動して、“あぁ、良いライヴだったな!”と感じられることが一緒に作り上げるということだとは思っていたものの、“ファンの人達と自分達がお互いにフォローし合える関係”ということについては、そこまで深く感じていなかったんですよ。
でも、今回はそれをひしひしと感じるくらい、“今!!!”という瞬間を味わいました。
――ファンの方達との信頼関係を再確認できた。
野中:そうですね。信頼していなかったということではなく、より深く信頼し合えていたというか。
――逆に、ファンの方達が「メンバーは、こんなにも信頼してくれていたんだ!」と感じる瞬間もあるのではないかと思います。
野中:うん、きっとそうなんでしょうね。凄くシンプルですけど、心から“ありがとう!”と思いました。
白:ツアーをまわる中で今まで以上に強く感じたのは、ファンの人達が本当にChantyの楽曲を愛してくれているということ。
ヴィジュアル系だし、楽曲以外にもルックスが好きだとか、色々あるとは思うんです。
それはそれで必要なことだし構わないんですけど、ライヴをしていると“皆、本当にChantyの楽曲を愛してくれているんだな”と実感できる。
最近は、客席のお客さんの表情をよく見られるくらいの余裕も生まれてきたので、より強くそれを感じます。
楽曲も人間も含めて、Chantyは凄く愛されている幸せなバンドだなと思います。
野中:あと、自分達が想像しているよりもずっと、ファンの人達はメンバーのことをよく見ているんですよ。
白:確かに!インストアイベントなどで少し話をする機会があると、“そんなところまで見ていたんだ!?”と思うことを言われたりしますね(笑)。
野中:自分が成人くんのほうを向いて演奏している時って、客席に背中を向けているじゃないですか?だから、僕の前に居る子達には僕の表情が見えていないはずなんですよ。でも、
インストアで「あの時、お互いに笑い合っていましたよね?」とか言われると、大体当たっているという(笑)。
凄いなと思います。
――お顔が見えていなくても、背中に楽しそうな空気が表れていたのかもしれません(笑)。
野中:あ、それはそうかもしれないですね(笑)。芥さんが「ファンの人から『Chantyのライヴを観る時、目がふたつじゃ足りない。
それくらい、色々観たいところがある』と言ってもらった。」と話していたことがありますけど、それってすごく嬉しいことですよね。
――それくらい見どころが満載ですから!
芥:そういえば、このツアーの某所で白くんが泣いた時があったんです。
野中:たぶん、自分的にふがいないライヴをしてしまったと感じていたんだと思うんですけど。ライヴ後に車に乗ってきた白くんが「今日、本当にごめん。凄く悔しいな。」と肩を震わせ始めて・・・。
白:ライヴというのは演奏以外の要素も重要なものだから、自分の中で“このラインまでしっかりと演奏できれば、来てくれた人達に楽曲の魅力を伝えらえるな”というボーダーラインみたいなものを持って臨んでいるんです。
でも、その日はそのラインを大きく下回ったと感じる部分があって。
1回目のミスをしてしまった後に“このままではダメだ、切り替えよう”と思ったけれど、持ち直せないままライヴが進行していって、そこで2回目のミスが出た瞬間、心がポキッと折れた・・・。
もしかしたら、観ている人達にもそれが伝わって、“今日の白は元気がないのかな?”なんて考えてしまった人が居るかもしれない。
本来、オーディエンスが考えなくても良いようなことを考えさせてしまう原因を自分が作ってしまったことがめちゃくちゃ悔しくて、そんな状況でライヴをしている自分自身にも苛立ってしまって。
――その結果の悔し泣きだったんですね・・・1本1本のライヴに真摯に取り組むが故の涙、その姿勢が素晴らしいと思います。
成人:本当に!涙ってそう簡単に出ないし、なかなか泣くことも無いですから。
芥:他のメンバーからしたら「そんなダメだった?」という感じで、一瞬困惑したんですけどね。
その姿を見て、自分も更に頑張らなくてはと思いました。
そこまでハードルを高くもってくれているんだなって実感したし、本当に熱い男だなって嬉しくなりました。
白:本当に久しぶりに泣きましたし、涙が出てきたことには自分でも驚きました。
それほど悔しかったんだって実感したし。
もうこんな涙を流すことが無いようにしっかりやっていこうと、改めて思いました。
――成人さんはいかがですか?
成人:最初のほうで白くんも言っていたように、ライヴごとにバンドの意識の持ち方が違うように、ファンの人達の見方も違うものだと思いますけど、こうして主催という冠を掲げてツアーをすることによって、ファンの人達の士気も上がって、一緒に作り上げながらツアーを進めているなと実感できています。
周年ワンマンを控えた夏のツアーでそう感じられていることが、バンドにとって大きな財産だなと思います。
――主催となると、ファンの方達もいつも以上に「Chantyを一番に盛り上げたい!」というお気持ちが強くなるでしょうし。
成人:その想いは伝わっています。
大阪公演のアンコールの声が、本当に凄かったんですよ。
おそらく、これまでイベントツアーで体感した中で一番大きかったと思う。
メンバー皆で「これが本当のアンコールだな!」と話したくらい、本気で求めてくれているのが伝わってきました。
――そうやって求めてくれる気持ちや熱量が、何よりの原動力になることでしょう。
一同:そうです!
成人:アンコールの予定は無かったけれど、あの時ばかりは全員が「やりたい!」と声に出しましたからね。そういうライヴができていることが幸せです。
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“人の死というのは、なかなか不可思議な現象だな”と思ったんです。
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――では、2ヶ月連続リリースの第2弾となる『嫌いなこと』について伺っていきます。まずは、この作品タイトルについてお聞かせ願えますか?
芥:嫌いなことは常にたくさんありますが、その中から最近特に感じた嫌いなことをふたつ歌詞に書きました。
『淡々と』は、大切な人が亡くなったところから生まれたんですけど・・・俺は、身近な誰かが亡くなる度に曲を書いていることに気付いたんです。
『半透明』や『天翔る』、『とある星空の下』も若干そういうニュアンスだし。
前回のインタビューで『ららら』の歌詞が“覚悟系”だという話をしましたけど、今回もまた“自分は何度同じようなことを書くんだろう、何度繰り返して思うんだろう”と改めて感じてしまって。
――近しい人間の死というのは感情を大きく揺さぶられる出来事ですから、曲や詩に表れるのも自然なことではありますよね。
芥:うん、それはきっとルーティーンとして当然のことだし。“人が死ぬ”ということの意味は、おそらく“確認させるための作業”みたいなもので。
最近亡くなってしまった大切な人が、以前に自分の身内を亡くした時、俺に向かって「これが“死ぬ”ということだよ・・・つまらないね。」と言ったんです。“つまらない”という言葉が、こんなにも重く響いたことは無かった。
そうしたら、今度はそう言っていた本人が亡くなってしまって、またつまらなくなっちゃって・・・。
――その時の「つまらない」という言葉に込められた想いを考えると、心に強く焼き付いてしまいますね・・・。
芥:そうなんです。
亡くなったことによって、自分の中での存在やら色々な大事なものが消えていくけれど、その度に何かが補填される作業みたいなことが行われて。
そうやって淡々と繰り返されていくことを、良しとしている自分と嫌だと思っている自分が居て。
そんな“どうしようもないこと”を書いた歌詞です。
――死は抗えない、どうにもできないものですから。
芥:うん、どうしようもないソングですよね。
それによって、自分の中にどんな意味を見出していくかは人それぞれなんだろうな。
だから、これは悲しい歌ではないです。
――ええ。タイトルどおり、淡々と進んでいく日常の中での感情を描写していて、悲観しているのとはまた違う。
芥:うん。矛盾していて、おかしいんですよ。
“「いかないで」そこで待ってて すぐに行くから”と言って、そこに居たいし居て欲しいのに、時間の経過によって離れていってしまうじゃないですか?
向かっているのか、離れているのか、わからない。
そう考えていくと、“人の死というのは、なかなか不可思議な現象だな”と思ったんです。
死という事象以外でも、例えばバンドが解散して無くなることにも、大切にしていた何かが消える瞬間にも、全てにあてはまる“抗えない何か”みたいなことを書きたかった。
だから、「結構、残酷な曲だな」と思いながら書いていました。
悲しくはないけれど、思っているほど綺麗な曲ではないです。
白:でも、曲調的にはふわっとしているから。
野中:優しい曲調だよね。
白:そうそう。優しくて切ない感じの曲調なのがまた良いよね。
芥:前作の『白光』同様、4人で一緒に好きなアーティストのライヴを観に行ったことで“こういう曲が作りたい”と生まれた曲です。
白:ギリギリ間に合ったね(笑)。
芥:本当に、結構ギリギリでした(笑)。でも、「これが絶対にやりたい!」と思った。
野中:メンバー全員がそう思っていましたね。
芥:最初の時点では、頭のベース案とメロディーしかなかったんです。
野中:あのフレーズは地獄でした!(苦笑)
一同:(笑)
芥:あんなフレーズとイメージが頭の中にはあったんだけど、自分では形にできなくて。いつもどおりメンバー全員でスタジオで固めようとしたんですけどね、どうしてもスタジオでもしっくり形にできなかったんですよ。
野中:最初にスタジオで芥さんが「こういう感じで弾いて欲しい」とベースを弾いてみせてくれたんですけど、とにかく難しいから途中で止まるし弾けないし・・・曲の全景もなかなか見えてこなくて。
芥:でも、どうしても形にしたくて。実は、『白光』のMVは静岡で撮影していて、撮影の翌々日が名古屋でのライヴだったんですね。
工程的には、静岡→一旦、東京に戻る→ライヴ当日に名古屋へ移動となっていたんですけど、俺と白くんだけは静岡から名古屋へ直入りさせてもらって、2人でずっと『淡々と』を形にする作業をしました。
白:それによって、何とか(笑)。
芥:間に合いました(笑)。そのあとはまたスタジオワークで磨いていって・・・でも、あの時間が無かったら、きっと完成できなかったですね。
――その結果、この名曲が生まれたんですね!本当に、映画などの主題歌にできるんじゃないかと感じました。サビに入るところで、鳥肌と涙がぶわっと・・・。
一同:あぁ、良かった!
芥:まだ何のタイアップもついていないので、絶賛募集中です!(笑)
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Chantyのことを知らない人が聴いても、何か揺さぶられる瞬間がある曲を皆で作りたかった。
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――世代や性別といったものを超えて受け入れられる楽曲だと感じますし、バンドにとってひとつの代表曲になったらいいなと思います。
芥:そうですね。今までのChantyは、新作をリリースしても、その曲達をすぐにはライヴで演奏しないことが多かったんですよ。
――それには何か理由が?
野中:深い意味は無いです(笑)。その日のセットリストに必要だと思ったら入れる。そうじゃなきゃ入れない。単純に、そのくらいの気持ちですよね。
芥:だけど、『叫びたくなったから』と『嫌いなこと』は、もう頻繁に演奏しているんです。
野中:それも、活動を続けてきた中での心境の変化かもしれないですね。
芥:そう思う!
野中:今まではあまりやらなかったことを、今は頻繁にやっている。今までとは180度変化することが出てくるくらい、意識が変わってきているんだと思う。
一同:そうだね。
芥:過去を否定するのではなくて、“今、伝えたいこと”が何なのかによって変化していく部分があるのは当然なんじゃないかと思う。
段々、産声をあげた状態のままで楽曲を置いておくことが嫌になってきたんですよね。
“生み出すことができた素敵な楽曲達をセットリストにどう交えれば、他の楽曲達も更に育っていくだろう?”と、これまで以上に深く考えるようになったし。
このあいだのライヴも1曲目が『淡々と』からだったので、モニターに寄りかかって寝そべって、幕が開いたら“明け方に見た夢”みたいなものを表現する形から始めてみたんです。
ただ、そのライヴハウスの幕がパッと落ちる透過幕みたいなものだったので、幕が落ちたらいきなり俺が寝そべっているような状態になっていたことで最前列の人達から「おぉ、ビックリした!」という声が聞こえてきて(笑)。
一同:(爆笑)
芥:もう少し色々な環境面も考えてやれば良かった、というのは反省点です(笑)。
――思考面も表現面も、また大きく進化中という感じがします。
芥:そうですね。Chantyのことを知らない人が聴いても、何か揺さぶられる瞬間がある曲を皆で作りたかったんです。
――そのお言葉どおり、誰の曲かわからずに耳にしても「良い曲だな」と感じられる作品になりました。
野中:自分達でも、そう感じています。もし他のバンドが演奏していたら「めちゃくちゃ良い曲だな!」と思える、そんな曲にできました。
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自分を卑下することで得た信頼なんて、本当にくだらない。
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――そこから一転、ちょっと辛辣さも感じる『実際』のお話に移ります。
芥:これは、周囲の雑音に対して「うるさ~い!!!」と爆発して書いた歌詞です。
BLEACH(アニメ)に出てくる藍染隊長の台詞に、「あまり強い言葉を遣うなよ、弱く見えるぞ」というものがあるんですけど。音楽関連に限った話ではないですが、他人を見下したり自分を卑下したりして信頼を得ることはくだらないなと思うんです。
“何が正しいと感じるか”は、人それぞれじゃないですか?
でも、その正しさというのは、他の誰かの思う正しさと比較して主張すべきものではないと思うんです。
自分が本気で正しいと思っているなら、それが正解。
なのに、そこで何かを引き合いに出して比較しようとする人が多くて。
・・・だからね、歌詞の説明のためとはいえ、今こうしてここで「そこがおかしい」と話していること自体も、俺の気持ちに反しているんですけど(苦笑)。
――確かに(苦笑)。
芥:俺自身、自分のことを卑下して相手からの「そんなことないよ!」という言葉を待っていた時期があったけれど、もうそういうことも嫌で。
何か思ったならそうすればいいし、本心でそれを望んでやっていれば、それがきっと目の前に居る人を幸せにすることに繋がるんじゃないかなって。
だから、この曲は何かをディスっているわけではなく。
実は、凄く平和な気持ちの曲かもしれないです。
――何かと主張をしたがる人間が多い世の中ですからね。
芥:そう、SNSも良くないですよね。真実バイキングですよ。
前に【赤いスカーフ】という曲の解説インタビューで“神様バイキング”という言葉を遣いましたけど、今は“真実バイキング”なんです。
それぞれの真実がありすぎて、どの真実に従ったらいいのかわからなくなりますもん。
そう言いながら、拠りどころを探してしまうことも良くない。
そんなことは隅っこで語っていれば充分だというような話まで主張してしまうから、どんどんおかしな感じになっていって。
正しいと思うことは自由だし、それがその人にとっての正解に違いないけれど、表現の仕方って難しいなぁと思う。
そんな、今の俺がリアルタイムで感じて考えていることを書いた曲です。
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『実際』はメンバー全員でスタジオでバッと作ったので、よりライヴ感を出すことができた。
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野中:この曲は、楽器をジャンジャン鳴らしているところから始まるじゃないですか?
そこで耳を澄ましてもらうと、物凄く遠くのほうで芥さんの「あ~~!!」という声が聴こえます(笑)。
白:そう!是非、知っておいて欲しい(笑)。
野中:同じスタジオ内で演奏している僕らにはしっかり聴こえていたんですけど、ドラムに立てたマイクにギリギリ拾われて入った声なので。でも、その感じが凄く良かった。
――あの始まり方、カッコいいです。
芥:(『淡々と』から)雰囲気が一転して。
白:(野中さんの)弦が切れたよね(笑)
野中:そう!あの部分はレコーディングの最後に録ったんですけど、ベースの弦が切れました。
“ベースの弦って、レコーディングで切れることがあるんだ・・・これが最後で良かった”と思った(笑)。
そこから、成人くんのカウントに繋がって。
成人:実は、俺もちょっとやらかしたんです(笑)。
「カウントの声も入れてやろう。」と言われて、「わかった、俺が声を出す。」と答えたんですけど、何故か手を動かさずに口だけで「ワン・トゥー・スリー・フォー!」とカウントしてしまったという(笑)。
一同:(大爆笑)
野中:俺らはそのまま演奏に入ったけれど、おそらくオペレーター側はざわついていたと思います(笑)。
芥:それはそれで、斬新で良かったんですよ(笑)。
成人:口だけのカウントだったのに、メンバーには伝わって演奏に入ってくれたんです(笑)。
――「カウントを言う!」ということに集中してしまわれたんでしょうね(笑)。
成人:そこに意識が行き過ぎました(笑)。
――曲全体を通してのライヴ感が凄く良かったです。
野中:音源にはあまり無いライヴ感ですよね。
白:この曲はメンバー全員でスタジオでバッと作ったので、よりライヴ感を出すことができました。
芥:白くんが持って来てくれた原案を基に、30分くらいでアレンジできた曲です。
――速い!!!
野中:おそらく、その原型は皮膚分くらいしか残っていないです(笑)。あっという間に進化して、アレンジもどんどん重なって。
白:そう!元の形は皮膚くらいで、骨の部分などは全て変わりました(笑)。
芥:「ああしたらどうかな?」「こうしたらどうかな?」とやっていった結果ですね(笑)。
――それこそ、バンドマジック。
白:本当に!
芥:それにしても、今回の2ヶ月連続リリースの2作品は本当に曲が良過ぎて、ヴォーカルが入らないほうが良かったんじゃないかと思っちゃうんですよね。
白:嘘!?
野中:芥さん、ラフミックスで貰ったオケをめちゃくちゃ聴いていたんですよ。
芥:ツアー先のホテルで野中くんが部屋に来たら、俺が大音量で普通に聴いているという(笑)。
曲が良過ぎて、自分が未熟に感じました。結果論になりますけど、歌で、もっともっと押し上げたかった。
自分の中にあったイメージまで届ききってなくて、本当に悔しいですもん。
――芥さんの中のハードルが物凄く高い・・・。
白・野中・成人:高いですよね。
芥:俺の中での完成がまだ見えていないので、頑張ります。
ライヴのセットリストに新曲を入れたがるのも、自分の中で早く完成させたい気持ちが強いからなのかもしれない。
この2ヶ月連続リリースは、本当に良い作品を生み出せたからこそ、自分の中には悔しさもあって。
別に何かを失敗したわけでも、コンディションが悪いわけでもないです。
レコーディングの時点では、勿論ベストテイクだったはずなんですけどね。
それでも届かなかった。だからこそ、本当に頑張ろうって思いました。
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この2曲で、Chantyというバンドの6年間がわりと見えるのではないかと思う。
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――メンバー全員が「この作品達を生み出せて良かった」と強く思っているのが伝わってきて、それがまたとても嬉しいです。
芥:作品を出す度にそう思ってはいるけれど、メンバーがその気持ちをここまで外に向けて言葉にしているのは初めてかもしれない。
野中:『淡々と』も『実際』も、本当に良かったからね。
白:俺もかなり『淡々と』と『実際』をループして聴いているんだけど、2曲のバランスが凄く良くて。甘いものとしょっぱいものを交互に食べているような感じになるんだよね。
一同:確かに!
野中:それぞれに、Chantyらしい曲ですよね。『淡々と』みたいな優しい感じの曲も、『実際』みたいな良い意味での雑さのある曲も、それぞれChantyらしいと思っているんです。
この2曲で、Chantyというバンドの6年間がわりと見えるのではないかと思う。
芥:前作のインタビューでも「2曲で見えるものがある」と話したけれど、2作連続でそういう作品になりました。
成人:Chantyの場合、それを意図してやっているわけではないから面白いなと思うんですよね。
芥・白・野中:確かに!
成人:曲調的に両極端の楽曲を入れようと意識したわけではないし、作品のテーマ性みたいなものを決めてから制作に入ったわけでもないので。
野中:でも、インタビューとかで「そういうテーマで制作された作品ですか?」と訊かれたら、僕は「はい!」と答えると思います(笑)。
一同:(大爆笑)
芥:そのほうがカッコいいからね!(笑)
――あはははは(笑)。それにしても、この短期間にこれほどのクオリティーの作品を連続して生み出されるとは、Chantyのこれからが益々楽しみになりました。
野中:実際、白くんが加入してくれたことが物凄く大きいと思います。
芥・成人:本当に!
芥:最近『monorium』という初期にやっていた曲を白くんがアレンジしてくれて、久しぶりにセットリストに組み込んでみたんですけど、これがまた最高に良い形にできて。
当時は大体『ダイアリー』という曲とセットで「消えたい!!!」みたいな感情で歌っていたけれど、今の4人のChantyで奏でることによってその解釈が全く変わってしまうくらい、前を向いた凄く強い曲になったんです。
――元々あった楽曲達を進化させることは、バンドと楽曲に対する愛情が深くなければできないことですよね。
白:深いですねぇ・・・(しみじみ)。
野中:自分でそう言えるって、わりと凄いことだと思うよ。これからも既存曲がリアレンジされることがあるかもしれないので、その時はまた楽しんでもらえたら。
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不安や謎があるから、続けていける。
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――いよいよ、6周年の新宿BLAZEワンマンまで1ヶ月を切りました。
芥:本当にあっという間でした。ツアーや制作によって、バンド力が上がってきていると思うし、各地でしっかりしたものを届けられているという手応えもあります。実験的なことも色々やっているしね。
野中:まだツアーも残っているからね。
芥:うん、まだまだ試したいことがたくさんあります。
ライヴに関しては、常日頃から何かと準備をしているつもりなので、新宿BLAZEワンマンだからといって特別な準備をしなくても大丈夫です。
野中:たぶん、今準備をしても当日までに絶対に変わりますしね(笑)。
芥:白くんが頑張ってくれていることもあって、今までのスタンスを崩さずに活動できているんです。
うちの場合、セットリストや曲に対する臨み方がツアー先で変化していくことが結構あるので。
そういう部分で柔軟さを失わずに活動できているから、「新宿BLAZEだから!」みたいに変に気張らなくても、常にしている準備が結果的にそこへと繋がっていくはず。
――そのステージにあったものを、自然と生み出せる。
一同:うん。
芥:本当は既存曲のアレンジにもっと時間が掛かると思っていたんですけど、大抵のことは「大丈夫!」と言ってやってくれる。
白くんは、100%以上の臨み方をしてくれています。
それに対して、リズム隊も懐の広さを見せて、常にどっしりと構えていてくれるんですよ。
そういう意味では、ライヴを作るという部分の準備は常に万端なので。
野中:それと同時に、Chantyは常に不安も無いとダメなので。
どれだけ準備が完璧でも、不安は絶対に忘れずに。
――どんなに準備万端であっても、世の中に「絶対」は存在しませんからね。
芥:不安や謎があるから、続けていけるんですよね。
このツアーの大阪公演、これまでに出演したことのないライヴハウスで、わからない部分も多くて不安もあってドキドキしていたんですけど。
その空間の中にある謎をお客さんも含めた全員で解き明かした結果、最後に素晴らしいアンコールが生まれた。
そこにたどり着けたことは、バンド冥利に尽きるなと思いました。
不安や謎があった上で、それを薙ぎ払って進んでいけることが、一番の幸せなのではないかと思います。
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9月16日に新宿BLAZEで、楽しさや感動を共感して分かち合ってくれる仲間を募集しています。
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――最後に、6周年を楽しみにしている方達、そして「ライヴへ行ってみようかな」と考えている方達に、個々が9月16日をどんな公演にしたいかを含めたメッセージをお願いします。
野中:どんなライヴになるかはまだ全然わからないですけど、おそらく緊張することは間違いないです(笑)。
ただ、周年だから何か特別なことをしてやろう的な考えは無いし、変に気合いを入れるつもりも無いです。
でも、来て欲しいです。単純に、皆でお祝いがしたいので。
――周年はひとつの集大成であり、ひとつの通過点でもあり?
野中:“通過点”という言葉でひと括りにはしたくないですけど、今Chantyは6年目じゃないですか?6年目だけど、実質1年目なんですよ。
新宿BLAZEワンマンは、この4人で掲げた新しい目標なので、それを叶えたい。
叶えたいから、来て欲しい。
たぶん、これまでChantyのメンバーは「ライヴに来てくれ」というような言葉はあまり言ってこなかったんです。
「それぞれの自由だから、来られる時に来てくれれば」という感じだった。
今でも、そういう気持ちはありますし。
――押しつけたくはない。
野中:そう、押しつけたくない人間の集まりなので。
だから、自分達の気持ちを押しつけるわけではないけれど、シンプルに「一緒に祝いたい」です。9月16日に新宿BLAZEで、楽しさや感動を共感して分かち合ってくれる仲間を募集しています。
僕は、それくらいの気持ちですね。
――福岡で感じた気持ちが、また味わえるような。
野中:うん、またあんな共感を共有できる日にしたいです。
成人:「ライヴに来て」というような言葉は、文字なので薄く感じられてしまうのかもしれないですけど、俺は単純に今のChantyを更新したいと思っています。
ファンの人達の誰がいつのライヴを観てくれていたのかまではわからないし、それぞれにファンになって1年目だったり2年目だったりとあるでしょうけど、9月16日にこの4人で“過去最高のChanty”を更新するので、その空間をファンの人達と共有したいし、共感して欲しいです。
・・・そのためには、どうしたらいいですか?(突然の疑問)
一同:(沈黙からの大爆笑)
野中:その疑問を抱いたまま終わろう(笑)。
成人:まぁ、いくら熱いことを言っても、伝わらない時は伝わらないですからね(笑)。
一同:確かに。
野中:だからこそ、問いかけたくなるんですよね。
芥:今の成人くん、一緒に答えを探したそうな顔をしていたもんね。
「スライムがなかまになりたそうにこちらをみている」みたいな感じだった(笑)。
一同:(爆笑)
――白さんはいかがでしょう?
白:Chantyは、ある程度の長さの演奏時間の中でより真価を発揮するタイプの楽曲達とライヴの運び方だと感じるので、ワンマンという形が一番魅力的に見せられるのではないかと思うんです。
だから、少しでも興味を持ってくれている人達には、ワンマンで自分達の真価を観てもらいたい気持ちが強いです。
やっぱり、会場の広さや天井の高さによって楽曲が映える部分もあるし、そういう意味でも楽曲の魅力を最大限に引き出せる環境で、長い演奏時間のライヴができるので、この機会に自分が好きなものをたくさんの人達に観て聴いて欲しいです。
芥:9月16日は、プロジェクションマッピングもしない。CO2も出ない。特効も打たない。
在るのは、僕ら4人とおまえたちだけです。
新体制になってから、自分の中でも改めて“初めて感”というものを感じる部分が多くなって。ここ数回のライヴで“今日この日というのは、僕らにとっても客席の皆にとっても「初めて」でしかないんだな。
そうか、常に初めてなんだ。”ということを強く感じたんですよ。
だから、既に楽しみにしてくれている人達も、「行こうかな」とまだ迷っている人達も、全員フラットな気持ちで足を運んでもらえたらと思います。
その1日を一緒にお祝いして作り上げたことが、足を運んでくれた人達のブログなり日記なりの“2019年9月16日”という部分に刻み込まれたら、そこに「Chantyの6周年を一緒に作り上げた」という記憶が残ったら、それが何よりも嬉しいので。
一生心に残るような1日を一緒に作り上げたいので、どうか皆の9月16日を僕達にください。
新宿BLAZEで待っています。
取材・文:富岡 美都(Squeeze Spirits/One’s COSMOS)
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